2015 年 55 巻 12 号 p. 897-903
患者は78歳男性である.2003年より一過性の末梢神経障害や紫斑があり,両下肢の網状皮斑と多発性単神経炎を呈し来院した.一般検査,神経生検,皮膚生検でも血管炎所見は無く,病理学的に細動静脈に血栓を伴う軸索変性が認められた.抗リン脂質抗体が陽性であり,原発性抗リン脂質抗体症候群による虚血性末梢神経障害と診断された.抗凝固療法で一時的に症状改善が得られたが,2ヶ月後に再発し,免疫抑制療法中の感染を契機に劇症型となり多臓器不全で死亡した.剖検でも全身の動静脈塞栓が認められたが,血管炎所見はなかった.多発性単神経炎の鑑別として抗リン脂質抗体症候群も考慮する必要がある.