2015 年 55 巻 5 号 p. 327-332
症例は73歳男性である.発熱と後頭部痛,眼球運動障害,複視,右眼瞼下垂のために入院となった.入院後に頭痛と眼症状の増悪がみられ,意識障害を呈した.頭部MRIでは斜台部造影増強効果と鞍上部・海綿静脈洞部に造影増強効果をもつ腫瘤性病変をみとめ,頸部CTでは左内頸静脈の血栓性閉塞をみとめた.血液培養結果からFusobacterium nucleatumによるLemierre症候群と診断し,抗菌薬と経口ステロイド薬の併用による治療をおこなったところ症状は消失した.Lemierre症候群に起因する斜台骨髄炎,海綿静脈洞病変はきわめてまれであるが,ステロイド併用によりすべての症状を治療しえた貴重な症例であった.