2016 年 56 巻 3 号 p. 186-190
症例は53歳男性.左方注視時複視で発症し,頭部MRIで造影効果のある多発脳病変を認めた.悪性リンパ腫が疑われ前医で脳生検を行ったが悪性所見はなく,血管周囲にリンパ球の集簇を認めることから免疫関連性脳炎が疑われ,ステロイドパルス,シクロホスファミド投与,血漿交換等の免疫療法を行うも治療に反応しなかった.当院に転院後,脳生検を再度行い,最終的に原発性中枢神経系血管炎と診断した.ステロイドパルスとメトトレキサートの投与を行い病巣は縮小した.一度の脳生検では正確な病理診断がつかず,その後も侵襲的な治療が必要な場合は,複数回脳生検を行い正確な診断に至る必要がある.