臨床神経学
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症例報告
急性の経過で対麻痺,多発脳神経麻痺を来した髄膜悪性黒色腫症の1例
服部 香寿美松田 希村上 丈伸伊藤 英一宇川 義一
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2017 年 57 巻 12 号 p. 769-774

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抄録

症例は62歳男性.約1週間の経過で歩行困難となり,嗄声,嚥下障害,呼吸不全を来した.神経学的には弛緩性対麻痺に加え,瞳孔不同,眼球運動制限,嚥下障害といった多発脳神経障害を認めた.また,右腋窩に腫大リンパ節を触知した.脊髄MRIにて馬尾の腫大と脊髄髄膜造影効果を認め,右腋窩リンパ節生検から悪性黒色腫転移と判明した.全身の観察にて右第4指爪下の原発部位を確認し,2回目の髄液細胞診で腫瘍細胞が証明でき,髄膜悪性黒色腫症と診断した.化学療法は困難で全身管理を継続したが,転院第60病日に永眠された.本症例は髄膜癌腫症の典型症状がなく,急性の経過で対麻痺と多発脳神経障害を呈した点が特徴的であった.

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© 2017 日本神経学会
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