2018 年 58 巻 12 号 p. 771-774
症例は,約2年前に単純ヘルペス脳炎(herpes simplex encephalitis; HSE)に罹患歴のある64歳男性.重症肺炎による敗血症性ショックに続き,HSEの再発を来した.敗血症では,初期の炎症反応後に抗炎症反応が増幅して免疫が抑制される免疫麻痺と称する時期が存在し,この期間に単純ヘルペスウイルス等の潜在性感染ウイルスの再活性化を来しやすい.本例で重症感染症への罹患を契機にHSEの再発が惹起されたことは,これを裏付ける結果と考えた.HSEの既往がある症例の重症感染症罹患時には,数日遅れて潜在性ウイルスの再活性化による脳炎再発を来す可能性があることを念頭に慎重に治療経過を観察する必要があると考え報告した.