臨床神経学
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症例報告
多彩な神経症状を呈しMRI・髄液にて特異的な異常所見が検出されなかった中枢神経原発移植後リンパ増殖性疾患の1例
竹内 有子落合 淳小野田 統西平 守邦打田 和治吉田 眞理
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2022 年 62 巻 1 号 p. 44-48

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抄録

症例は60歳,女性.腎移植後,免疫抑制剤を内服中であった.移植16年後に,認知機能低下,歩行障害が出現.失調,腱反射亢進,意識障害,ミオクローヌスなどを呈したのち,発症から約2年で死亡.経過中,髄液細胞診,頭部MRIなどを繰り返し施行したが,特異的な所見は認めなかった.剖検にて中枢神経に限局して,血管周囲を中心に単クローン性リンパ球浸潤を認め,移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disorder,以下PTLDと略記)と診断した.PTLDは,移植後の重大な合併症である.中枢神経病変としては頭蓋内の結節性病変を呈する場合が多いが,移植後に神経症状が出現した際,画像上異常所見を指摘できない場合も鑑別診断として考慮する必要がある.

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© 2022 日本神経学会
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