2022 年 62 巻 11 号 p. 869-872
35歳男性.アルコール依存症の加療歴あり.来院する2週間前よりふらつき,その後複視を認めたため当院を受診した.神経学的所見では両側外転神経麻痺,四肢腱反射低下,体幹失調あり.生化学検査ではビタミンB1 16 mg/dlと低値であった.頭部MRI FLAIRでは両側外転神経核,視床内側,乳頭体に病変を認め,Wernicke脳症(Wernicke encephalopathy,以下WEと略記)と診断した.入院当日よりフルスルチアミンによる点滴治療を開始し,神経症状と頭部MRI画像所見は改善した.入院第10病日に当科を退院した.WEの早期診断及び治療のために非典型的なMRI画像所見を把握する必要がある.