臨床神経学
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総説
神経内科領域におけるウイルス再活性化による神経障害
島田 知世常深 泰司飯村 康司菅野 秀宣服部 信孝
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2022 年 62 巻 9 号 p. 697-706

詳細
要旨

長期間無症状のまま宿主細胞内にとどまるウイルスが,免疫状態の変化により再活性化することがある.活性化したウイルス自体の障害に加え,再活性化によって引き起こされる自己免疫的な炎症も細胞障害を生じる機序となる.なかでもヒトヘルペスウイルスは頭蓋内手術を契機として潜伏感染していたウイルスが再活性化し脳炎を発症することがある.てんかん外科の普及に伴い注目を集めている疾患概念であるが,欧米に比べ本邦での報告は極めてまれである.本総説では,神経領域で再活性化するウイルスについて概説し,術後の単純ヘルペスウイルス再活性化脳炎について詳細に考察する.

Abstract

After establishing latent infection, some viruses can be reactivated by the alteration of host immunological conditions. First, we reviewed viruses that can cause neuronal damage by reactivation. Then we focused on the herpes simplex virus (HSV). The reactivation leads to neuronal damages through two possible mechanisms; “reactivation of a latent herpes virus” by which viruses can cause direct virus neurotoxicity, and “post-infectious immune inflammatory response” by which a focal reactivation of HSV leads to an inflammatory reaction. The former is radiologically characterized by cortical lesions, the latter is characterized by subcortical white matter lesions. We experienced a female, who underwent the right posterior quadrantectomy and then developed recurrent herpes encephalitis caused by herpes simplex reactivation, which pathologically demonstrated inflammation in the white matter, suggesting a post-infectious immune inflammatory response. The patient was successfully treated with immunosuppressants. The reactivation of the HSV is extremely rare in Japan. Neurologists should recognize this condition because this disorder will increase as epilepsy surgery gains more popularity.

1. ウイルス再活性化

ヒトに潜伏感染した後に再活性化するウイルスは様々な細胞に感染し,免疫回避機構やアポトーシス抑制機構を利用して潜伏感染を維持する.そして化学療法や免疫学的製剤の使用,造血幹細胞移植,後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency syndrome,以下AIDSと略記),高齢といった免疫低下状態のほか,外傷や手術,精神的ストレス等により再活性化する.単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus,以下HSVと略記)の再活性化は古くから報告されており, “reactivation of a latent herpes virus” という再活性化したウイルスそのものによる神経細胞の直接障害と,局所でのウイルス再活性化を契機に自己免疫機序により炎症が惹起される “para/post-infectious immune inflammatory response” の二つの機序が考えられている1.近年手術侵襲による再活性化が注目されており,特に中枢神経に潜伏感染しているヘルペスウイルス(human herpesvirus,以下HHVと略記)は周術期に再活性化し脳炎を発症することがあるが,必ずしも典型的なヘルペス脳炎を呈するわけではない.脳神経内科医も知っておくべき病態であるが,本邦からの報告は極めて稀である.本総説では,まず非ヘルペスウイルスによる再活性化に関して概説し,その後HHV,特にHSVの術後再活性化を考察する.

2. 非ヘルペスウイルスによる再活性化

ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus,以下HIVと略記)

HIVはCD4陽性リンパ球や単球に感染し,数年から10年を経てAIDSを発症する.抗レトロウイルス療法中も髄液中にウイルスが検出され,中枢神経では血管周囲マクロファージ及びミクログリアに持続感染する.近年,根治治療として,潜伏感染しているHIVをあえて再活性化させ,障害性T細胞による破壊やアポトーシスに導くlatency reversing agentsが注目されているが,薬剤投与により血中で検出されたウイルスとは遺伝的に異なるウイルスが10倍以上中枢神経で検出された報告もあり,中枢神経での再活性化は末梢組織ないし血中とは独立して生じると推測される2

ヒトポリオーマウイルス

ヒトポリオーマウイルスはJCウイルス(JC virus,以下JCVと略記)とBKウイルスが含まれる.小児期に不顕性感染し,成人健常人の約70%で血中抗ウイルス抗体が陽性である34.オリゴデンドロサイトに感染したJCVは “変異型” で,制御領域に欠失や重複,反復配列などの変異を伴う5.AIDS患者のほか,免疫学的製剤や臓器移植に伴う免疫不全患者で再活性化し進行性多巣性白質脳症を発症する6.また,小脳皮質の萎縮を伴うgranule cell neuronopathyや灰白質病変を伴うJCV脳症,JCV髄膜炎も生じる78.非小細胞肺癌に対して化学放射線治療後1ヶ月の経過で失語と認知機能低下を呈した74歳女性例では,頭部MRIでは皮質~深部白質病変が亜急性に拡大したが髄液異常はなく,脳生検でポリオーマウイルスが陽性,髄液JCV PCRが陽性であった8.血清中の抗JCV抗体の推移から再活性化と考えられている.

BKウイルスは腎移植患者から同定され,多くが10代までに不顕性感染し,腎臓と中枢神経に潜伏感染する9.免疫正常者は極めて稀であるが10,免疫不全患者で再活性化し脳炎や髄膜脳炎を生じる11)~13.骨髄移植後15ヶ月後に深部白質病変とともに意識変容を認めた48歳女性例12,急速進行性の意識変容,失調を呈したHIV陽性の43歳女性が報告されている13.髄液細胞数の上昇は軽度であるが脳生検でBKウイルスの関与が示唆された.

麻疹ウイルス

麻疹ウイルスは初感染でほぼ全例が発症し,中枢神経に潜伏感染後,数年ないし十数年してウイルスが変異を獲得すると再活性化し遅発性に亜急性硬化性全脳炎を発症する1415.新規発症者は米国では年間4~5名15,本邦では年間1名程度と以前と比べ著減しているが,発症すると進行性で予後は非常に不良である.

3. ヒトヘルペスウイルスによる再活性化

HHVは潜伏感染する代表的なウイルスで,HSV-1,HSV-2,水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus,以下VZVと略記),エプスタイン・バールウイルス(Epstein–Barr virus,以下EBVと略記),サイトメガロウイルス(cytomegalovirus,以下CMVと略記),HHV-6,HHV-7,HHV-8の8種類がヒトに感染し,特にα亜科に属するHSV-1,HSV-2及びVZVは神経向性を示す.また,β亜科のCMV及びHHV-6, 7, γ亜科のEBV及びHHV-8も再活性化により神経障害をきたす.ヘルペスウイルス属では免疫状態に関わらず再活性化による中枢神経障害をきたし,術後の再活性化もHSVに比べて症例数は少ないものの散見される(Table 1).

Table 1  Features of the viruses which can reactivate.
Virus Symptoms at
first infection
Latent cells followed
by first infection
Neurological symptoms
at reactivation
Patientsʼ immune status
at reactivation
Non-HHV HIV Fever, pharyngitis, lymphadenopathy CD4+ lymphocytes, brain macrophages Encephalitis Immunosupressive
JCV Asymptomatic Renal epithelial cells,
B lymphocytes,
bone marrow
Leukoencephalopathy
(PML)
Immunosupressive
(AIDS, transplant, immunotherapy)
Measles virus Rash, fever, pneumonia, encephalitis Brain SSPE Unknown
(rather immunosuppressive)
HHV HSV Asymptomatic,
herpes labialis,
genital herpes
Sensory ganglia,
brain
Encephalitis, myelitis,
cranial nerve palsy
Immunsupressive Immunocompetent
(post-operation, trauma)
VZV Chikenpox Sensory ganglia Herpes zoster,
delayed facial paralysis,
myelitis,
meningoencephalitis
Immunsupressive Immunocompetent
(post-operation, trauma)
EBV Asymptomatic,
infectious
mononucleosis (IM)
Naïve B lymphocytes Encephalitis/cerebellitis, cranial nerve palsy,
vasculitis, myelitis
Immunosupressive
CMV Asymptomatic, similer to symptoms of IM or influenza, hepatitis Bone marrow, monocyte progenitor cells Encephalitis Immunosupressive Immunocompetent
(post-operation)
HHV-6B Exanthema subitem,
febrile seizures,
status epilepticus,
encephalitis
Mononuclear cells,
glial cells
Encephalitis (acute
limbic encephalitis)
Immunsupressive
(especially after hematopoietic stem
cell transplantation) Immunocompetent
HHV-7 Resemble to HHV-6B CD4+ lymphocytes, glial cells Encephalitis,
radiculomyelitis
Immunsupressive
Immunocompetent

HHV; human herpesvirus. HIV; human immunodeficiency virus. JCV; JC virus. HSV; herpes simplex virus. VZV; varicella-zoster virus. EBV; Epstein–Barr virus. CMV; cytomegalovirus. PML; progressive multifocal leukoencephalopathy. SSPE; subacute sclerosing panence-phalitis. AIDS; acquired immunodeficiency syndrome.

VZV

VZVは水痘として発症し脊髄神経や脳神経の知覚神経節に潜伏感染後,再活性化により帯状疱疹やRamsay Hunt症候群のほか,脳血管障害(脳梗塞や脳動脈瘤)や髄膜脳炎,小脳炎,脊髄炎を生じる16

帯状疱疹で約3割17,髄膜脳炎では約4割18,脊髄炎では約5割19は免疫不全患者の再活性化であったが,外科治療後の再活性化によっても遅発性末梢性顔面神経麻痺20)~23や脊髄炎24,帯状疱疹2526,髄膜脳炎2728を生じる.遅発性顔面神経麻痺は歯科口腔外科領域の治療後20や聴神経鞘腫,鐙骨手術の術後212272時間以上経過後に発症する.特に術後数週間を経て発症する症例では膝神経節に潜伏感染していたVZVの再活性化が原因と考えられる2023.口腔外科領域の術後顔面麻痺を呈した8人の検討では平均して術後12.8日後に発症し,血清学的にも再活性化の可能性がある20.多彩な症状,発症時期より “reactivation of a latent virus” と “para/post-infectious immune inflammatory response” 双方の関与が考えられる.

EBV

EBVは思春期の初感染で伝染性単核球症を発症する.この際,Latent membrane proteinsやEBV nuclear antigensなどの潜伏関連抗原によりB細胞での潜伏感染を維持する.健常者では細胞性免疫により感染細胞が排除されることで無秩序な増殖はきたさず90%以上が無症候性キャリアとなるが29,数%が再活性化し,脳炎や小脳炎,脳神経麻痺,血管炎,脊髄炎,ギランバレー症候群など生じる3031.髄液中EBV-PCRが陽性であった症例の1/4ではHSVやHHV-7など他のウイルスも陽性となるが,その場合も再活性化したEBVが病態に関与している32.中枢神経への直接浸潤に加えて3334,感染したB細胞からのサイトカインや,T細胞の活性化による神経障害など,免疫反応を介した “para/post-infectious immune inflammatory response” により障害をきたす30.Vinceらは免疫正常な17歳男性の髄膜脳炎で,灰白質へのウイルスの直接浸潤のほか,末梢血中でT細胞の活性化を認め,免疫抑制薬の効果からも免疫学的機序と考察している34

CMV

CMVは幼少期に唾液や尿を介して感染し,通常は無症状か軽度の症状だが,時に重篤な脳炎や肝炎,網膜炎をきたす35.骨髄もしくは顆粒球・単球前駆細胞に潜伏感染したCMVの遺伝子は完全に転写抑制され36,T細胞やNK細胞からの免疫回避機構やアポトーシス抑制機構により潜伏感染が維持される37)~39.免疫不全患者では再活性化で重症化し致死的となることがある.コントロール不良の2型糖尿病を有する61歳女性の脳炎の症例では頭部MRIで左大脳半球に浮腫性病変を認め髄液中CMV-PCRは陽性であるが,血中PCRは陰性,CMV-IgMも上昇せず中枢神経での再活性化と考えられた40.一方,免疫正常者のCMV関連急性横断性脊髄炎では,3例で髄液中PCRは陰性で,免疫学的機序を介した “para-infectious immune inflammatory response” が考えられた41.また16例の免疫正常者の外科的侵襲後CMV感染症では,発熱や肝炎,骨髄抑制が平均術後32日で出現しており,症状出現から診断まで約2週間要していた42

HHV-6, 7

HHV-6はHHV-6AとHHV-6Bに分類され,HHV-6Bは乳幼児期に突発性発疹を発症し,末梢血単核球,唾液腺及び中枢神経グリア細胞などに潜伏感染する.造血幹細胞移植後4344や急性白血病の治療中45,AIDS患者46など免疫不全患者で再活性化し脳炎を生じる.特に,造血幹細胞移植後脳炎の40~60%はHHV-6Bにより急性辺縁系脳炎を生じる47.同種造血幹細胞移植後のHHV-6関連脳炎9例の報告では,3例では特徴的な側頭葉病変を認めており,全例で髄液HHV-6 PCRが陽性であったが,髄液細胞数の上昇は軽度にとどまり,また,移植後平均して21日で発症していることが特徴的であった44.一方,剖検脳で高度のネクローシスとともにHHV-6ウイルスが検出された報告もあり48,再活性化したウイルスによる直接障害(reactivation of a latent herpes virus)及び免疫学的機序を介した障害(para-infectious immune inflammatory response)の両者が起こりうると考えられる.

HHV-7も中枢神経系に潜伏感染し,免疫不全患者で再活性化する.また,HHV-7の初感染によりHHV-6BやCMVの再活性化が惹起され中枢神経障害をきたす4950.なお,HHV-6及びHHV-7は健常者でも再活性化することがある5051.免疫正常の51歳男性の脳脊髄炎例では髄液中HHV-7及びCMV PCRが陽性であり再活性化による神経障害と考えられた50

4. HSV

HSVはHSV-1, 2の二つの血清型を有し,脳炎や口唇ヘルペス,性器ヘルペス,新生児感染を生じ,粘膜上皮を支配する知覚神経末端に不顕性感染する.HSVは神経節のみならず脳実質にも,特に小児に無症候性に持続感染する52)~54.潜伏感染細胞では,latency associated transcript(LAT)と呼ばれる転写物が持続的に発現しており,ウイルスゲノム全体がヘテロクロマチン構造を保持することによってウイルス遺伝子発現が抑制される.加えて,LAT遺伝子領域に発現しているsmall non-coding RNAもウイルス遺伝子発現を抑制することで潜伏感染の維持に寄与している55.そしてLATを過剰発現させたウサギでは再活性化が抑制される一方,同遺伝子をノックダウンすると再活性化することから,再活性化時にもLATが関与することが示唆されている56

単純ヘルペス脳炎

単純ヘルペス脳炎(herpes simplex encephalitis,以下HSEと略記)は成人の急性ウイルス脳炎でもっとも頻度が高く57,季節性や性差,年齢差はない5859.主にHSV-1が原因となるが,乳幼児ではHSV-2が多く重症化しやすい.無治療での致死率は70~90%に達し,迅速なアシクロビル投与でも30%に神経学的後遺症を残す60

外科的侵襲に伴うHSV再活性化

HSEの約2/3は外傷や身体的・精神的ストレス,免疫抑制に加え,外科的処置によってHSVが再活性化することにより発症する61)~63.また,手術を契機として脊髄炎64や脳神経麻痺65も起こり得る.海外の報告が多く,難治性てんかんや腫瘍に対する術後のHSE26例66,HSEや脳神経麻痺40例67等のレビューがあるが,本邦からはUdaらの1例のみであった68

詳細が確認できた術後HSE発症例37例66)~98の平均年齢は35.5歳(2~78歳),男性17例,女性20例であった.過去のHSV感染が明記された11例6668707173778083849098は全例難治性てんかん手術の症例であった.残りの26例6667697274)~767879818285)~8991)~97は脳炎などの既往が明らかでなく,無症候性に中枢神経感染していたと考えられる.前者11例のHSV再活性化時平均年齢は13.2歳(2~27歳),後者26例の平均年齢は45.0歳(11~78歳)と,過去にHSV感染が明らかな症例は若年で再活性化していたが,全例難治性てんかん症例で,若年で手術が施行されたためかもしれな‍い.

外科的侵襲によるHSV再活性化にも二つの神経細胞障害機序が関与している66.すなわち,再活性化したウイルスそのものによる神経細胞の直接障害である “reactivation of a latent herpes virus” と,局所でのウイルス再活性化を契機に自己免疫機序により炎症が惹起される “para/post-infectious immune inflammatory response” である.前者はいわゆる典型的なHSEに相当し,神経細胞の壊死や血管周囲・間質への炎症細胞浸潤を反映し,画像上は皮質を含む異常信号を呈する99)~101.一方で,皮質下に広範な白質脳症を呈する症例もある.これらはvasospasmによる虚血82や出血95を反映することもあるが,唯一病理学的な検討を加えたKoenigらの報告を考慮すると1,ウイルスによる直接障害よりも感染に伴う免疫学的炎症反応の機序をより反映している可能性がある.画像所見の相違が二つの機序を反映していると考え,画像所見が明示されている既報告を分類した(Table 2, 3).すると “reactivation of a latent herpes virus” が示唆される症例(Table 2)は9例6670768087939798, “para/post-infectious immune inflammatory response” (Table 3)は8例68748182849095であり,それぞれ平均年齢は34.6歳,30.0歳であった.また,HSV既感染が明らかな症例は前者が4例(44%),後者が3例(38%)であった.全身性炎症(白血球やCRP)に関して具体的な記載のある報告は,前者で1例93,後者は3例818295(化学放射線治療後で白血球減少を呈した74は除く)であり,前者は白血球19,000/μl,CRPは記載なし,後者は白血球平均14,833/μl,CRP平均6.7 mg/dlであったが,記載のある報告が少なく比較は困難であった.また,自己抗体に関して記載している報告はなかった.一方,前者はほぼ全例髄液細胞数の増多を認め(平均273.3/μl),髄液中HSV-PCRも陽性であるが,後者では髄液細胞数は軽度上昇ないし正常であり(平均42.3/μl),HSV-PCR陰性症例もある90.手術から治療開始までの期間は前者が10.1日(無治療の症例93は除く),後者は18日と長かった.

Table 2  Recurrent cases by the mechanism of “reactivation of a latent herpes virus”.
Ref. Age Past history
of HSE
Diagnosis
(Surgical form)
Steroid administration after surgery Symptoms at reactivation
(After surgery)
HIA in Brain MRI
(FLAIR)
The data in CSF
Cell (/μl)
Protein (mg/dl)
HSV-PCR
in CSF
Treatment at reactivation
(After surgery)
Prognosis
(66) 12 (+) Refractry epilepsy
(Craniotomy)
(−) Fever, HA
(POD11)
Rt temporal cortex 91
NA
HSV-1 ACV (14 days) Mild
weakness
24 (−) Delmoid cyst
(Craniotomy)
(+) Fever, HA
(POD8)
Along the meninges 1,517
94
HSV-1 ACV(11 days) Recovery
(70) 11 (+) Refractry epilepsy
(Craniotomy)
NA Fever, HA
(POD12)
Rt temporal cortex 265
83
HSV-1 ACV(12 days) Recovery
(76) 33 (−) Acoustic schwannoma
(Craniotomy)
(+) Fever, aLOC
(POD10)
Corpus callosum 39
84.4
HSV-1 ACV (11 days) Recovery
(80) 11 (+) Refractry epilepsy
(Craniotomy)
NA Fever, seizure
(POD5)
Lt temporal cortex 110
90.1
HSV-1 ACV (10 days) Recovery
(87) 51 NA Subarachnoid
hemorrhage
(Coiling)
(−) Fever, aLOC
(POD7)
Lt temporal cortex 21
74
HSV-2 ACV (7 days) Speech
disturbance
(93) 78 (−) Refractry epilepsy
(Craniotomy)
(−) HA, aLOC
(POD10)
HIA at Lt frontal lobe and anterior cingulate gyri 89
Normal
HSV-1 Not done Dead
(97) 65 (−) Ependymoma at
cervical cord
(Laminectomy)
(+) Fever, HA
(POD5)
Lt temporal, frontal and insular cortex 285
236
HSV-1 ACV (8 days) Limb
weakness
(98) 27 (+) Refractry epilepsy
(Craniotomy)
NA Fever, HA, aLOC
(POD8)
Lt temporal cortex 48
Normal
HSV-1 ACV (8 days) Recovery

HSE; herpes simplex encephalitis. POD; post-operative day. HA; headache. aLOC; altered level of consciousness. HIA; high intensity area. FLAIR; Fluid-Attenuated Inversion Recovery. Rt; right. Lt; left. CSF; cerebrospinal fluid. HSV; herpes simplex virus. HSV-PCR; herpes simplex virus-polymerase chain reaction. ACV; Acyclovir. NA; not available.

Table 3  Recurrent cases by the mechanism of “post-infectious immune inflammatory response”.
Ref. Age Past history of HSE Diagnosis
(Surgical form)
Steroid administration after surgery Symptoms at reactivation
(After surgery)
HIA in Brain MRI
(FLAIR)
The data in CSF
Cell (/μl)
Protein (mg/dl)
HSV-PCR in CSF Treatment at reactivation
(After surgery)
Prognosis
(68) 20 (+) Refractory epilepsy
(Craniotomy)
NA Fever, aphasia
(POD 11)
Lt frontal cortex
and SWM
43
41
HSV-1 ACV (11 days) Recovery
(74) 60 (−) Glioblastoma
(Brain biopsy)
NA Fever, weakness
(POD 30)
Lt parietal and
Rt frontotemporal
cortex and SWM
< 5
100
HSV-1 ACV (30 days) Dead
(81) 40 NA Pituitary adenoma
(Craniotomy)
(+) Seizure
(POD 4)
Bil insular cortex,
Lt temporal and
frontal cortex and SWM
80
NA
HSV-1 ACV (20 days) Dead
46 NA Petroclival meningioma
(Craniotomy)
(+) Fever, aLOC
(POD 7)
Lt frontotemporal
cortex and SWM
720
NA
HSV-1 ACV (12 days) Dead
(82) 13 (−) Cranio-pharyngioma
(Craniotomy)
(+) Fever, aLOC
(POD 15)
Lt frontotemporal
cortex and SWM
5
39
HSV-1 ACV (22 days) Speech disturbance, weakness
(84) 19 (+) Refractory epilepsy
(Craniotomy)
NA Fever, seizure
(POD 10)
Rt frontoparietal
cortex and SWM
10
49
HSV-1
POD10 (−)
POD20 (+)
ACV (20 days) Dead
(90) 17 (+) Refractory epilepsy
(Craniotomy)
(+) Seizure
(POD 6)
Bil frontotemoral cortex
and SWM expanded
through corpus callosum
2
26.9
(−) ACV (11 days) Behavioral abnormalities
(95) 25 (−) Refractry epilepsy
(Craniotomy)
NA aLOC
(POD3)
Lt temporal cortex NA HSV-2 ACV (18 days) Speech disturbance
Our case 38 (+) Refractory epilepsy
(Craniotomy)
(−) Coprolalia, hallucination, delusion
(POD 48)
Bil frontotemoral cortex
and SWM expanded
through corpus callosum
1, 56 (POD77)
2, 48 (POD96)
POD77, 96, 101 (−) ACV (103 days)
IVMP (108 days)
CPA (115 days, 145 days)
Recovery

HSE; herpes simplex encephalitis. POD; post-operative day. aLOC; altered level of consciousness. FLAIR; Fluid-Attenuated Inversion Recovery. HIA; high intensity area. SWM; subcortical white matter. Bil; bilateral. Rt; right. Lt; left. CSF; cerebrospinal fluid. HSV; herpes simplex virus. HSV-PCR; herpes simplex virus-polymerase chain reaction. ACV; Acyclovir. IVMP; intravenous methylprednisolone. CPA; cyclophosphamide. NA; not available.

免疫学的機序が主体でも局所でのHSVの再活性化が原因である点は同じで,アシクロビルが治療の基本である.HSV再活性化によるHSEでも約半数で死亡ないし後遺症が残存し,HSV初感染によるHSEと同様予後不良である66.特にTable 2, 3が示すように “para/post-infectious immune inflammatory response” の機序では予後不良の症例が多い.これは白質の炎症が主体で髄液異常が軽度で,診断に時間がかかり,アシクロビルのみでは不十分な可能性がある.アシクロビルに耐性を示すHSVは極めて稀で102,免疫治療の追加を検討する必要がある.

我々は,HSE後遺症による難治性てんかんに対する離断術後に急速進行性の白質脳症を呈し,HSVの再活性化と診断した1例を報告した103.本症例では広範な白質病変を認め,白質病変の生検部のHSV-PCRが陽性であったが,繰り返し測定した髄液HSV-PCRは陰性であった.さらに,生検脳において組織学的には白質病変の炎症所見が高度である一方細胞障害は比較的軽度で核内封入体も見られず,局所でのHSV再活性化を契機に免疫学的機序で炎症が惹起された,いわゆる “para-infectious immune inflammatory response” に該当すると推察された.広範な白質病変に病理学的検討を加えた報告はKoenigらの一報のみで,抗ウイルス薬で治療後,数週間して再発した脳炎に免疫学的治療が著効しており,本症例に病理学的にも臨床経過も類似している1.潜伏感染後に特にTLR-2が関与する免疫反応が過剰となることで脳実質にダメージをきたしうることや104,HSE罹患後に抗NMDA受容体脳炎が惹起されることが105,再活性化したHSVが自己免疫反応を惹起する機序と考えられている.アシクロビルの効果が不十分な場合や広範な白質病変を伴う症例には,病理学的検討も視野に入れ免疫療法の導入を考慮すべきであろう.諸外国では,HSE既往患者に対するてんかん手術前のアシクロビル予防投与も提唱されている66719098.本邦では保険外適応であり副作用の観点からも投与は慎重であるべきだが,外科的侵襲に伴うHSV再活性化によるHSEは診断に苦慮し,重症化しやすく,予後不良であることから予防投与の効果も期待される.

おわりに

本邦では外科的侵襲に伴うHSV再活性化は広く認知されておらず,また諸外国でも治療や予防投与に関してコンセンサスが得られていない.特に免疫学的炎症反応の機序は病理学的検討が不十分であり,今後の症例の蓄積により予防法,治療法の開発が待たれる.

Notes

※著者全員に本論文に関連し,開示すべきCOI状態にある企業,組織,団体はいずれも有りません.

文献
 
© 2022 日本神経学会

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