論文ID: cn-000959
症例は55歳の男性.約3日の経過で発熱,意識障害,視力低下が出現した.神経学的に軽度の意識障害,両側の視力障害がみられ,頭部MRIのFLAIR像で高信号域が多発し,一部に造影剤による増強効果を認めた.脳生検の結果より単純ヘルペス2型脳炎および急性網膜壊死(acute retinal necrosis; ARN)の合併と診断した.アシクロビルとステロイド併用療法を施行したが,意識障害および視力障害はさらに悪化した.抗ウイルス薬をホスカルネットに変更し,意識障害および視力の改善を認めた.ARNはヘルペス髄膜脳炎後に発症するが,本症例のようにARNを合併したヘルペス脳炎は稀であり,難治性の場合はホスカルネットの投与を考慮する必要がある.