論文ID: cn-001466
2度の脳梗塞による両側半球病変後に特異なジャルゴン発話を呈した伝導失語の1例を報告した.症例は84歳の右利き男性である.第2回目の発症当初(以下,発症はこの時点をさす)より語新作ジャルゴンと音韻性変復パターンを認めた一方,表出面全般にわたる音韻性錯語や接近行動を認め,失語症の病態像としては伝導失語に語新作ジャルゴンが混在していた.発症27ヶ月後時点で,語新作と音韻性変復パターンは消失したが,豊富な音韻性錯語と接近行動は残存し,伝導失語の病態像が明確化した.本例の語新作の発生機序としては,伝導理論が説得性を有していると考え,語新作と音韻性錯語との症候論的な関連性を指摘した.