症例は57歳男性.日常的に野良猫との接触歴があった.X年6月より左下肢脱力,7月より意識障害を呈し当院に入院した.髄液検査で細胞数増多,頭部造影MRIで脳内に多発造影域を認めた.トキソプラズマ脳症を疑い抗生剤を投与したが,反応に乏しかった.初回脳生検で診断に至らず,組織よりPropionibacterium acnesの検出があり,抗生剤を継続したが症状の悪化と病変の増大がみられた.再生検で膠芽腫と診断され,画像所見と合わせて多巣性膠芽腫と診断した.同病は膠芽腫の稀な病型で,予後不良である.診断に苦慮する多発脳病変では同病も鑑別に挙げ,早期の脳生検を考慮すべきである.