論文ID: cn-002088
症例は死亡時76歳,女性.71歳時に頸部ジストニアによる首下がりが出現.74歳時から首下がりは軽快したが,すくみ足がめだつようになった.筋強剛や振戦は認めなかった.ドパミントランスポーターシンチグラフィ(DAT-SPECT)で両側線条体集積低下を認め純粋無動症と診断.76歳時に頸部後屈,四肢筋強剛を認め,顎関節脱臼を繰り返した.誤嚥性肺炎により全経過5年で死亡.神経病理学的に黒質・淡蒼球・視床下核に4リピートタウ病理を伴う変性,淡蒼球・被殻に少数のtufted astrocyteを認め,進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy,以下PSPと略記)と診断した.首下がりを呈したPSPの報告例は2例のみで剖検例はない.本例では淡蒼球におけるタウ病理が首下がりの出現に関与した可能性が考えられた.