症例は50歳代女性である.X−1年10月から,腰痛・後頭部痛が出現し,徐々に悪化したため,X年1月当科を受診した.神経学的に,舌左方偏倚を認めた.頭部MRIで,左後頭顆の信号異常,脳実質に造影効果を有する多発結節を認めた.Computed tomography(CT)で左肺の腫瘤,肝内多発腫瘤,脊椎・左後頭顆に骨破壊所見を認めた.以上より,肺癌(多臓器転移),左後頭顆転移による後頭顆症候群と推定した.気管支肺胞洗浄液細胞診で腺癌を確認した.オシメルチニブ(EGFRチロシンキナーゼ阻害薬)投与により,腫瘤の縮小,左舌下神経麻痺・後頭部痛は改善した.後頭顆症候群は,悪性腫瘍の頭蓋底転移を示す症候であり,注意が必要である.