反応時間は心理学研究において最も重要な指標の一つであるが、適切な解釈や分析方法は未だ確立していない.そこで、脳の構成と、記憶の想起に関する神経現象を再現できる単純な物理モデルに基づいた判断時間のモデルを構築した.このモデルは反応時間の分布をよく再現できるだけではなく,判断における二種類の誤りを予言する.一つ目の誤りは,モデルが仮定する二つの記憶想起の主体が処理を終える順番に起因するもので、二つ目の誤りは,物理モデルの性質から導かれるものである.ストループ課題を用いた実験を行ったところ,判断時間(反応時間ではない)が長いほど誤りが発生しやすくなること確認した.これは物理モデルが予言した内容と一致したため,提案モデルは判断に関する現象の本質を捉えたモデルであることを示唆する.