手の運動に空間的に整合する視覚フィードバックは,その持続時間が長く知覚される。運動と結果の時間・空間的整合は自らが行為をもたらしている感覚(自己主体感)に必要であり,自己主体感は時間知覚を変調する。本研究は,運動の視覚フィードバックへの自己主体感が主観的時間を伸長すると仮説を立てた。実験参加者の左手の動作が撮影され,その撮影像の遅延 (50-1500 ms) や方向 (正立,倒立) が操作されて一定の時間モニタに呈示された。参加者は,過去の全試行と比べてその映像を長くまたは短く感じたかを回答した。また,自らが映像の手の動きを操っていると感じたかどうかについて回答した。その結果,運動の遅延視覚フィードバックは,物理的に同じ持続時間であっても主観的に短い時間を知覚させ,自己主体感を減衰させた。運動の視覚フィードバックが主観的時間を伸縮させる効果に,自己主体感が寄与することが示唆された。