抄録
1971 年から継続されている日本とメキシコ両政府による交換留学プログラムでメキシコに留学した日本人元留学生へのアンケートおよびインタビュー調査の結果から、留学生の意識や価値観 がどのように揺さぶられ変化したかを明らかにした。そして具体的にどんな現地体験が価値観に 影響を与えたかについてインタビュー内容をコーディングし、考察した。留学生は、学習や生活 の中で、予測・予知ができない様々なできごとを体験し、メキシコ社会の価値体系の影響を受けて、 留学以前に持っていた価値観を問い直すことになった。特に、新しいことを積極的に経験する、 人生を楽しむことを大切にする、既成概念に捉われずに物事を考える、多様な価値観や文化背景 を持つ人々と共生するという意識が高まり、各人の方法によってその変化を生活に取り入れている。新型コロナウイルスパンデミックが契機となってオンライン留学が急速に発展しその効果が 検証されつつある中で、費用や時間の負担が大きい渡航型留学の意義が問い直されている。本稿は、渡航型留学ならではの意義について、また非伝統的留学先への留学成果について検証するにあたっての示唆となる。