生コンクリートへの加水が,かつて社会問題化した。その理由としては,構造物の配筋密度が高くなり,工事仕様書で規定されている生コンクリートのスランプでは十分なワーカビリティーが得られないケースが生じるようになったこと,ポンプ打込みの普及で工事速度が向上する一方で,スランプの選択に施工条件に応じた合理性が求められるようになったこと,等が挙げられる。そのような背景のもと,土木学会では,コンクリート標準示方書で“打込みの最小スランプ”を施工に必要な条件の1つとして規定した。しかし,スランプの規定値に関していまだに発注者,施工者,生コン生産者の間で共通認識が十分得られているとは言えない。この問題解決のためには何が必要か。一方,生コンクリートの品質・性能に対する要求が多様化してきているが,JIS規格には単に標準品的なものが規定されているに過ぎず,これだけでは多様化するニーズに応えることはできない。そこでJIS規格にも品質・性能についての区分を設ける必要があるのではないか,との声も聞かれる。ここでは,これらの2課題について今後の検討の方向性を見いだすことを目的として行ったアンケート調査とパネルディスカッションの概要を報告する。