本研究は非戦災都市である金沢市の中心部に広範に残存する歴史的木造家屋に着目し、建物調査とそれらを利用する世帯・事業所への質問紙調査などにより、歴史的木造家屋利用世帯・事業所の特性と歴史的木造家屋継承の動向を明らかにするとともに、歴史的木造家屋を対象とする金沢市による改修補助事業の効果について考察することを目的としている。 歴史的木造家屋を利用する世帯は小規模で高齢者のみ世帯が多く、事業所は一部に複数店舗展開する比較的規模の大きいものもあるが、家族経営的な小規模事業所が多い。これまでの継承は、家族内で行われたものが大部分であり、新規利用開始例が経年的に減少しており、継承は停滞傾向にある。今後の継承については、約3割の世帯・事業所は継承の見通しがないことが明らかとなった。 補助事業の利用・未利用で比較すると、利用した世帯・事業所の方が、建物のよいところを見出しながら使っている傾向がある。また、補助事業の種類別では、居住性向上を対象に含む補助事業は家族外での継承を促し、景観要素としての再生に重点を置く補助事業は伝統的外観要素の修復に改修補助事業に効果があることが明らかになった。