2021 年 32 巻 p. 19-24
乗用車を利用した観光客の増加による観光地周辺の渋滞が問題になっている.交通渋滞は,観光地の魅 力低下,周辺住民の QOL 低下や環境負荷につながっていると考えられ,交通渋滞の緩和は観光地の主 要な課題の一つである.本研究では,彦根市により交通渋滞緩和のために彦根城周辺で実施されたパー ク・アンド・バスライド(P&BR)の社会実験における駐車場利用実態を,観測結果や利用者アンケー トから明らかにした.その結果,P&BR 利用者は彦根城近辺の駐車場利用者と比較して,滞在時間が長 く,訪問観光地数も多くなっており,P&BR 施策は周遊観光にも効果があることがわかった.交通面か らP&BR導入効果を定量的に評価するため,P&BRの車両の動きを組み込んだ交通流シミュレーション を行った.P&BR 未実施時の結果と比較したところ,P&BR 実施時の方が彦根城周辺の旅行時間や走行 速度,遅れ時間などの交通状況が改善される可能性があることがわかった.