日本都市計画学会中部支部研究発表会論文集
Online ISSN : 2435-7316
洪水常襲地域の旧挙母における城下町の高台移転に関する調査報告
小滝 省市
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キーワード: 治水, 城下町, 高台移転
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2022 年 33 巻 p. 59-62

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抄録

本調査は,洪水常襲地域である旧挙母(現愛知県豊田市)において,水害と治水対策の歴史,城下移転に至る経緯とその要因を明らかにしたものである.挙母藩が城下の高台移転を決断した契機となったのは明和4年の洪水であり,その最大の原因が矢作川の天井川化であった.要因として挙げられるのは,江戸初期の河床替工事による土砂堆積であるが,上流側の山津波による災害も加わり,さらに,農民の反対運動による安永川工事の遅延が被害を拡大した.また,昭和46年と明和4年の浸水範囲が一致することからも,堤防決壊など大規模な水害が発生した場合は,地形的に脆弱なエリアへの浸水被害が予想される.自然地形の上に都市が成立している以上,江戸期からその脆弱性は変わっていない.今後,都市の防災対策を講じる上で,過去の災害の被害状況と経緯,原因について調査分析し,治水対策等に活用することが重要である.

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© 2022 公益社団法人 日本都市計画学会 中部支部
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