近年、日本では産業構造の変化や担い手の不足により使われなくなる工場が増えている。滋賀県高島に集積する綿織物産地でも同様に稼働しない工場が出ており、産地各地に工場建築が残る。また、稼働している工場は、機械の新規導入時に増築や貸借により作業空間を変化させていた。そこで、地域に残る工場の建築的特徴について分析するとともに、企業別に創業から現在までの増移築の履歴、敷地の空間構成を調査した。現存する工場の多くは昭和中期から戦後にかけて建てられたもので、事業の変化に合わせ幾度か増移築を行っていた。廃業した工場を借り倉庫として使う事例も見られた。一方で放置されている工場もあり、空間資源活用の可能性が捉えられた。