2024 年 22 巻 p. 41-44
本稿は、台湾で歴史的環境の保存の文脈で注目される戦後に形成された軍人関係者集住地区「眷村(ケンソン)」の形成から解体、保存に至るまでの変遷を追い、政治的意向によって左右される歴史環境の保存プロセスについて考察することを目的とする。その結果、眷村は所有者である国防部や政府の思惑から長らく解体の対象となっていた。しかし、眷村の解体が加速する中、眷村で醸成されてきた歴史や、眷村住民らの居住権を守ることから保存の潮流が生まれた。そして、現在は、眷村居住者が醸成してきた周辺エリアとは異なる独自の生活圏を象徴するエリアとしての保存の価値が見出されていると考えられる。