日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-3323
Print ISSN : 2433-7773
第12回日本トレーニング指導学会大会
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口頭発表
速度低下閾値の異なるベンチプレスが総負荷量に及ぼす急性効果
*伊藤 僚将苫米地 伸泰千葉 至井野 拓実秋野 禎見
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 10-

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抄録
【トレーニング現場へのアイデア】本研究の結果から、疲労困憊に至らず総負荷量を最大化さ せる速度低下閾値として50%Velocity loss(50%VL)が推奨される。 【目的】本研究は速度低下閾値の異なるベンチプレスが総負荷量に及ぼす急性効果を明らかに し、筋肥大に有効な速度基準のレジスタンストレーニング法確立のための一助とすることを目 的とした。 【方法】測定環境:大学内のトレーニングルーム。測定参加者:運動部に所属し、ベンチプ レス経験を有する男子大学生7名(年齢:21.0±1.0歳、 身長:172.4±5.9cm、体重:69.2± 5.1kg、 ベンチプレスの最大挙上重量:72.5±9.6kg、 体重あたりのベンチプレスの最大挙上 重量:1.1±0.2.kg)を対象とした。実験または測定手順及び分析方法:最低でも中2日の間 隔を開け、別日で6日間測定を実施した。1日目はベンチプレスの練習を実施し、2日目はベン チプレスの最大挙上重量(以下1RM)の測定を実施した。3−6日目の測定は1RMの65.4−67.6%の 負荷でベンチプレスを4種類の異なる挙上速度低下閾値(30%VL条件、40%VL条件、50%VL条件、 60%VL条件)を用いてランダムな順序で実施した。セット間の休息は4分とし、ベンチプレス を3セット実施した。挙上速度はリニアポジショントランスデューサー(Gym AwareRS)を用 いて測定し、4条件における総負荷量(負荷×反復回数)を算出した。統計分析:一元配置分 散分析を用いて総負荷量の条件間の比較を行い、有意差が認められた場合は下位検定として Bonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。 【結果】30%VL条件、40%VL条件、50%VL条件の3条件では全被験者が規定した速度低下閾値に達 した。しかしながら、60%VL条件では7名中2名のみが規定した速度低下閾値に到達し、5名は規 定した速度低下閾値に到達せずに疲労困憊に達した。対応のある一元配置分散分析の結果、総 負荷量には条件間で統計学的な有意差が認められた(30%VL条件:1350.0±324.2kg、40%VL条件: 1666.4±271.5kg、50%VL条件:1774.3±263.2kg、60%VL条件:1833.2±261.6kg)。下位検定の 結果、30%VL条件はその他全ての条件と比較して総負荷量が有意に少なかった(P<0.05)。40%VL 条件と50%VL条件の間では統計学的な有意差は認められなかったものの(P>0.05)、40%VL条件は 60%VL条件と比較して総負荷量は有意に少なかった(P<0.05)。50%VL条件と60%VL条件の間には 統計学的な有意差は認められなかった(P>0.05)。 【考察】総負荷量は筋肥大効果に関わるトレーニング変数と報告されている(Kubo et al 2021)。60%VL条件は総負荷量において50%VL条件と統計学的に有意差が認められず、疲労困憊 により規定した速度低下閾値に到達しなかった被験者がいた。これらの結果から安全面、筋肥 大効果を考慮すると60%VLは有用でないと予想される。
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