文化資源学
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Print ISSN : 1880-7232
研究報告
世界遺産と無形遺産―交錯する二つの条約とその問題―
筬島 大悟
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2017 年 15 巻 p. 49-59

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抄録

現在、UNESCOの世界遺産条約と無形文化遺産条約では、それぞれ遺産リストへの登録に必要とされる価値が異なっているが、その価値の解釈において両者は混同され、その結果条約の運用に混乱をもたらすようになっている。今後の両条約の円滑な履行のため、両条約の関係を明らかにして論点を整理することは重要となるが、本稿では、この価値規定とその解釈の変遷に焦点を当て、両条約の現在の履行の問題点を整理し、両条約の現在の履行の関係性について分析を行った。その結果、世界遺産条約では、資産の多様性を重視する方策を各国が政治的に利用した資産の登録を行うことで世界遺産としての価値の逓減を招き、条約の精神が無形文化遺産条約化していることが、またその一方で、無形文化遺産条約では、地域比不均衡問題の発生や価値の顕著性の付与など、その履行が世界遺産条約化してきており、両条約の精神や制度が相互に交錯している現状にあることが明らかになった。

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© 2018 文化資源学会
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