塩害を受けたコンクリート構造物の補修対策として電気防食工法が普及している。この防食基準として,大気中コンクリート部材では「復極量が100 mV以上」が一般に採用されている。しかし,桟橋構造の梁部材のように間欠的に海水中に没する部位では,復極に必要な酸素の供給速度が遅いために復極量を満足できない場合がある。このような環境では,防食基準「鋼材電位が-850mV vs. CSE(飽和硫酸銅電極基準)よりも卑」が適切と考え,「復極量が100mV以上」と併せて,硬化コンクリート中の鉄筋を腐食させた供試体を用いて防食効果を調べた。その結果,湿潤環境において「復極量が100mV以上」を適用した場合,復極量が得にくく,電流調整が難しかった。一方,「鋼材電位が-850mV vs. CSEよりも卑」では,同条件で明らかな防食効果が認められたこと,および電流調整が容易であったことから,後者の防食基準が適していることが分かった。