コンクリートの劣化現象として知られるタウマサイト劣化(TSA)は,低温硫酸塩環境下で組織が脆弱化する硫酸塩劣化の一つであり,劣化原因となるタウマサイトは硫酸イオンの浸透でエトリンガイトとともに生成する。タウマサイトはエトリンガイトグループに属する鉱物であるため,粉末X線回折(XRD)では両者は近い回折線を示し,分離することは困難である。本研究では,タウマサイトとエトリンガイトの結晶水に着目し,試料を加熱処理および減圧処理により脱水させ,両者をXRDによって分別する方法について検討した。タウマサイトは減圧処理においても安定であったことからXRDによってタウマサイトが確認でき,また,セメントから実験的に生成させたタウマサイトおよび低温硫酸塩環境に暴露したコンクリート試験体を用いて本手法の適用性を検討した。