環境と安全
Online ISSN : 2186-3725
Print ISSN : 1884-4375
ISSN-L : 1884-4375
原著論文
低炭素化に向けた大学の環境報告書に関するベンチマーキング研究
酒井 伸一浅利 美鈴藤本 成彬
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 1 巻 1 号 p. 1_51-1_60

詳細
抄録

 世界的に、低炭素社会の実現が喫緊の課題となっている。大学では、多くの構成員が教育・研究及び社会貢献活動(医療を含む)に携わっているが、その環境負荷の管理・低減も重要である。そこで大学の環境負荷に関する実態を把握すると同時に、優良な削減策を特定するための基礎情報を得ることを目的とし、環境配慮促進法で環境報告書の作成が義務づけられた国立大学法人60大学を対象に環境パフォーマンスデータのベンチマーキングを行った。主たる対象は、2005~2007年度のエネルギー使用量(購入電力量、A重油、灯油、軽油、ガソリン、都市ガス、プロパンガス使用量)及びエネルギー起因のCO2排出量とし、CO2排出係数の統一等も行った。
CO2排出量(地域値ベース)は60大学合計で2005~2007年度にかけて、179万 t-CO2 /年、169万 t-CO2 /年、186万 t-CO2 /年と変化しているが、2007年度では日本全体のCO2排出量13億7,400万 t-CO2 /年の0.14%程度を占める。なお、各大学の2005年度と2007年度の増減を見ると、CO2排出総量(規定値ベース)で減少しているのは34大学であった。また床面積あたりCO2排出量では大学間で5倍以上の違いがあることがわかった。CO2排出総量及び原単位において2年連続で減少しているのは4大学であり、これらの大学の削減策が参考になろう。
 今後の具体策を抽出するためにも、海外も含めた更なる情報収集・分析が必要であるが、ここで用いたベンチマーキングは有効なツールであると考えられる。

著者関連情報
© 2010 大学等環境安全協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top