2014 年 5 巻 3 号 p. 131-141
東日本大震災によって東北大学工学研究科において甚大な室内被害が発生した。工学研究科等安全衛生委員会では、各研究室で管理する物品の地震対策を円滑に実施するために室内物品地震対策ガイドラインを作成した。本稿は作成したガイドラインの策定内容とその検討過程を示したものである。目的は、第一に人的被害の発生の防止とし、第二に備品・物品の被害の低減とした。地震時における物品の挙動を検討することの重要性を示し、段階的に実施する具体的な地震対策方法を明示した。地震対策方法は、はじめに室内の整理整頓と管理物品の少量化を行い、負傷や避難障害が発生し難い研究室のレイアウトを行ってから、物品の転倒・移動防止対策を行う。転倒・移動防止対策では、大地震にも耐えるために強度計算に基づいた検討として、地震対策の目標とする設計震度を設定し、基本的なアンカー強度の算出方法を示した。そして、震災の経験を踏まえ、研究室で共通する本棚や物品棚、高圧ガスボンベの具体的な固定方法を示し、実験台上の実験機器やドラフトチャンバー等の対策方法を示した。本ガイドラインは大学研究室の主な物品の具体的な地震対策方法を示し、地震対策を推進する有益な資料になると考えられる。また、地震対策における強度的な検討方法も明示したことで、制約が多いために対策が難しい実験機器類においても検討の基礎資料として活用ができると考えられる。