2014 年 5 巻 3 号 p. 183-190
近年、セメントの材料としてごみ焼却灰の再利用が注目されているが、この焼却灰には重金属類やダイオキシン類、塩化物が含まれていることから、環境中への溶出が懸念されている。この重金属の溶出抑制にはセメントの水和反応が有効とされている。 本研究では、鉛などの低沸点重金属を含む焼却飛灰(フライアッシュ、以下「FA」)を主原料とし水和反応させた組成の異なるセメント固化物7つ及びFAの計8つを検体として鉛溶出試験を行い、リサイクル資材としての適正の評価ならびに鉛溶出の要因の調査を行った。 試験は環境庁告示46号試験及びアベイラビリティ試験を実施し、46号試験ではFAでのみ土壌環境基準以上の鉛が溶出し、他の7検体については、ほぼ基準値以下の溶出であることを確認した。これにより鉛の溶出に関して、固化物のリサイクル資材としての適性が確認され、本試料における鉛の溶出を抑制する方法としてセメントの水和反応の有効性が示された。また、セメント固化物中での鉛の存在形態の違いによる溶出への影響を調べる為に硝酸鉛及び塩化鉛をそれぞれ1%添加した試料を用いて粉末X線回折による解析を行い、硝酸鉛や塩化鉛の一部が硫化鉛など溶出しにくいものに変化していることを確認した。更に同試料についても溶出試験を行い、鉛の形態の違いによって溶出量に差が生じることを確認した。以上の結果より、鉛の存在形態が溶出抑制における重要な要因であると結論づけた。