環境と安全
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原著論文
共存塩存在下・非共存下における塩化リチウム水溶液暴露メダカの毒性試験と体内酸化ストレスについて
佐野 智基山口 雅裕宮内 真愛中道 隆広石橋 康弘甲斐 穂高
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2017 年 8 巻 3 号 p. 123-134

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抄録

リチウムは、小型電子機器や電気自動車のバッテリーとして、あるいは躁うつ病で処方される薬の主成分として利用されており、需要と供給が著しく増加している金属元素である。他の金属と比較するとリチウムが生体に与える影響は弱いとされているが、生活の中で存在するリチウム量の著しい増加によって、環境中に存在するリチウム量増加の可能性が考えられる。本研究では、メダカを用いてリチウムが生体に与える影響を検討した。塩化リチウム水溶液を用いたリチウムイオンのメダカ仔魚に対する96時間急性毒性試験を行ったところ、半数致死濃度(LC50)は18.2 mg/Lであった。塩化ナトリウムやリン酸二水素ナトリウムが共存した場合のLC50は、それぞれ97.9 mg/Lと164 mg/Lであり、共存塩の存在により塩化リチウムの毒性は大きく軽減された。成魚を用いた毒性試験においても共存塩存在下で塩化リチウム毒性は軽減された。PCRを利用した塩化リチウム暴露成魚の酸化ストレス関連遺伝子の発現解析を行ったところ、塩化リチウム存在下では対照区の個体と比較してSOD遺伝子の発現増加が認められたが、共存塩が存在するとこれらの遺伝子発現量は減少し、共存塩の存在でメダカの酸化ストレスが緩和されていることが示唆された。以上の結果から、塩化リチウムはメダカに対して酸化ストレスを誘導すること、共存塩の存在は塩化リチウムによるメダカの死亡率を下げ、そのうちリン酸二水素ナトリウムは酸化ストレスを緩和する効果があることが示された。

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© 2017 Academic Consociation of Environmental Safety and Waste Management,Japan
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