抄録
近年、がん幹細胞(CSC)の理論は研究者から注目を集めており、がん研究の重要な焦点となってきた。マーカー分子がさまざまな固形腫瘍において過剰発現されているという報告以来、多くの研究がヒアルロン酸レセプターCD44を標的とする方法に注目している。CD44の主要な結合分子であるヒアルロン酸は、腫瘍集積性や細胞取り込みの増加を目指すナノキャリアの開発において重要なリガンドとなることが明らかにされている。そのためCD44を標的としたナノキャリアにさらなる機能を付加する研究が頻繁に行われている。既存の技術との組み合わせによって、より効率的な薬物送達が可能になることが予想される。この本稿では、これまでの文献から、CD44ターゲティング機能を利用した研究アプローチを紹介し、それぞれのアプローチで得られる利点について記述する。