Dental Medicine Research
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症例報告
長期的観察を行っている著しい下顎偏位および多数歯補綴治療を伴った骨格性下顎前突外科症例
久保田 雅人大山 晃代槇 宏太郎
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2012 年 32 巻 2 号 p. 97-102

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抄録

骨格が不正であることにより,口腔内に不適切な補綴物が装着されることがしばしばみうけられる.これらの場合予期せぬ咬合圧の負担が認められ,早期に咬合の崩壊を招くおそれが懸念される.そこで外科矯正で骨格の不正を是正し,良好な補綴物を装着することは,咬合および歯周病の観点において重要なことである.また,正しい歯の位置と緊密な咬合を獲得することは,咬合機能や審美性の獲得に重要であるとともに,外科矯正の後戻り防止において不可欠である.本症例は初診時年齢32歳3か月の女性で,下顎の前突感および非対称を主訴に矯正科を来院した.多数歯にわたり補綴処置が施され,前歯部のoverjet が-7.0 mmであり,下顎左側前下方への過成長を伴う long face type の骨格性下顎前突と診断した.レントゲン分析によりANB-3°, Ul-SNplanell2°, 下顎前歯歯軸角(以下 IMPA)86.1°, Gonialangle130.9°を示し,下顎角が大きく前歯部には骨格性下顎前突症特有の dental compensation が認められた.治療はマルチブラケットを装着し,術前矯正を1年4か月行った後,下顎枝矢状分割術を施行した.その後detailing を行い1 年後に術後矯正を終了した.術後において被蓋関係は overjet+2.0 mm, oveerbite+l. 5 mm に,上顎前歯歯軸角は Ul-SN108°に,IMPAは90.5°に改善した.骨格の不正および咬合が是正された後,ただちに適正な補綴物に換装することで,安定的な咬合が得られた.現在は保定開始後約10年を経過するが,安定した予後経過をたどっている.

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© 2012 昭和大学・昭和歯学会
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