昭和歯学会雑誌
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低カルシウム食とビタミンD欠乏食がアカゲザルの顎骨と歯に及ぼす形態学的変化について
二階堂 毅彦
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1990 年 10 巻 1 号 p. 18-30

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抄録

カルシウム, ビタミンDなどの栄養要因の欠乏が, 顎骨および歯にどのような形態学的変化をもたらすかをアカゲザルを用いて検索した.実験動物を正常食で飼育した対照群 (I群), 低蛋白・低カルシウム食を与えた低栄養食群 (II群), ビタミンD欠乏食で飼育したビタミンD欠乏食群 (III群), およびII群の飼料からビタミンD3を欠乏させた低栄養・ビタミンD欠乏食群 (IV群) の4群に分け, 各々の飼料で5-9年間飼育した.マクロX線写真による観察では, II, III群の下顎骨にI群と比べ著明な変化はみられなかったが, IV群では歯槽骨骨梁の減少, 歯槽硬線の不連続化と菲薄化, 下歯槽管の不明瞭化, 底部皮質骨幅の減少などの所見が認められた.顕微X線 (CMR) による観察では, IV群の下顎骨の石灰化不全と石灰化骨量の減少が著明であり, またセメント質にも石灰化不全がみられた.吉木法により作製したパラフィン切片による検索でも, II, III群の顎骨および歯では著変がなかったが, IV群では類骨や類セメント質の増加が明らかであった.また, パラフィン切片による検索から, マクロX線写真で観察されたIV群の歯槽硬線と下歯槽管の変化像は, 固有歯槽骨および下歯槽管壁における類骨の増加と密接に関連していることが明らかとなった.本実験により骨軟化症では長管骨以外に顎骨さらには歯にも種々の形態学的変化が起こっていることが明らかとなり, 骨軟化症の病態像として顎骨や歯の変化も重要であることが示唆された.

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