1990 年 10 巻 1 号 p. 55-61
顕微ラマン分光法は, Lille大学のDelhayeらによって1975年に報告されたマイクロアナリシスの-手法である.この方法は他の分析法と異なる際だった長所を持っており, 歯科分野にも極めて有用な分析手段と思われる.しかしながら, 独特の問題点も知られている.本研究では, 昭和大学歯学部に新規に導入されたレーザーラマン分光光度計を用い, 接着性レジンの作用機序の化学的な解明を試みる前段階として, 市販のdentin bonding agent と, ヒトエナメル質およびハイドロキシアパタイトのラマンスペクトルを計測した.この結果, 目的のスペクトルを得ることができたが, 接着性レジンの接着機構について最終的な結論を得るためには, さらに基礎的な改良が必要であると思われた.