昭和歯学会雑誌
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歯周組織の診査法に関する研究
-振動感覚の応用について-
堀内 茂貴
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1990 年 10 巻 2 号 p. 137-148

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抄録

歯周組織の性状の判定は, レントゲンによる支持骨の状態, 歯周ポケットの深さ, 歯肉の炎症の範囲や程度, ピンセット等を使用した歯の動揺度の測定により, 術者が総合的に判断して行っているのが一般的である.しかし, この判定法には主観がはいるために術者間の比較を行うことは難しく, 同一術者でも日時が異なれば判定が一定しない危険性がある.以前より客観的な診査方法がいくつか報告されてきているが, 実際の臨床で活用されているとは言えない状況である.本研究は歯周組織の客観的な診査法として振動感覚の応用を試みたものである.上下顎小臼歯を対象にオージオメーターと加振器で発生させた振動を歯に加え, 歯周組織の感覚損失値を測定するとともに, 加振器に内蔵された加速度ピックァップにより実際に加えられている振動の振幅を歯周組織の感覚閾値として求めた.それにより以下の結果をえた.1) 感覚損失値はある周波数 (ピーク周波数) で最小となるV字型のパターンを示し, この周波数は動揺度が増加するにしたがい低下した.2) ピーク周波数と歯槽骨の吸収度は負の相関がみられ, 骨の吸収の増加にともない周波数が低下する傾向がみられた.3) ポケットの深さとピーク周波数は, 上顎第二小臼歯を除き負の相関がみられ, ポケットの進行とともに周波数が低下する傾向がみられた.4) 下顎のピーク周波数は上顎よりも, 歯周組織の状態の変化に対して大きな変動を示し, かつ高い相関を示した.5) 感覚閾値は周波数とともに緩やかな変化を示した.6) 損失値からもとめた無負荷時の振幅は, 実際の加振器の振幅である感覚閾値よりも大きいが, ピーク周波数において両者の大きさに逆転がみられた.7) ピーク周波数と共振周波数はほぼ一致した.以上より, 本装置を用い歯周組織の性状を客観的に判定することが可能と考えられた.

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