昭和歯学会雑誌
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ストレプトゾトシン誘導糖尿病ラットにおける破骨細胞の微細構造学的分析
金子 春樹佐々木 崇寿斎藤 健東 昇平
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1990 年 10 巻 2 号 p. 216-227

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抄録

前回, 我々はストレプトゾトシン誘導糖尿病ラット, およびそれにテトラサイクリンを投与した場合の骨芽細胞における形態的, 機能的変化を各種方法を用いて検索し, 糖尿病では不活性化した骨芽細胞がテトラサイクリンを投与することにより, コントロールと同様の活性化した状態にあることを確認し, 報告した.今回は骨吸収に関与する破骨細胞の形態的, 機能的変化を超薄切片法, 酵素組織化学を併用して検討した.通常の破骨細胞には細胞質中に豊富なミトコンドリアとRERが, また核近傍にはゴルジ装置とライソゾームが認められたほか, 波状縁付近の細胞質中には無数の空胞も存在していた.細胞外では骨に面して明瞭な波状縁と明帯が認められた.酸性ホスファターゼの強い酵素活性は, 細胞質中ではゴルジ装置やライソゾーム, 空胞内部に観察され, 細胞外では波状縁の突起部および波状縁が接する骨吸収面に沿って反応産物が認められた.糖尿病ラットの破骨細胞では細胞内小器官の構成はコントロールとほぼ同様であったが, 細胞外では骨面と幅広の明帯で接している破骨細胞も一部観察されたものの, 多くの破骨細胞では破状縁と明帯の両方を欠いていた.ACPaseの酵素活性は, 幅広の明帯を有する破骨細胞のみに接する骨面にコントロールに比較して微弱な反応が観察されるにすぎなかった.テトラサイクリンをDラットに投与した場合は, 骨面に沿って明帯とわずかな波状縁を有し, ACPaseの酵素活性も波状縁部では強い破骨細胞も観察された.またテトラサイクリンの化学的アナログであるジメチルアミノテトラサイクリンをDラットに投与した場合は, 微細構造学的にも酵素化学的にもコントロールと同様の特徴を有していた.以上の実験結果から, ストレプトゾトシン誘導糖尿病ラットでは骨芽細胞のみならず破骨細胞も一部不活性化されること, またテトラサイクリンの投与が, 破骨細胞および, 関連する骨のリモデリングの活性化に有効であることが示唆された.

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