昭和歯学会雑誌
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形成期のラット歯槽縁に出現する軟骨様組織の走査電子顕微鏡的研究
大草 信人
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1991 年 11 巻 2 号 p. 188-200

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抄録

出生直後のラット新生仔における形成期の下顎骨歯槽縁に発生する軟骨様組織の細胞および線維性基質の立体超微形態を, 走査電子顕微鏡を用いて観察した.軟骨様組織の細胞内小器官は低濃度オスミウム処理によって, また, 軟骨様組織の線維性基質はトリプシン処理によって明らかにした.軟骨様組織の最表層の歯槽頂には, 長径約10μmの線維芽細胞あるいは骨芽細胞様の細胞が密に配列されていた.細胞の表面には軟骨細胞様の微細な細胞質突起を多数有しており, 長い細胞質突起はしぼしば隣接細胞のものと接触していた.細胞間基質のコラーゲン細線維は少量で不規則に走向していた.軟骨様組織の中央部には, 最表層の細胞より大型の長径約15μmの豊満な卵円形や多面体形の細胞が存在していた.中央部の線維性基質は, 細胞間の拡大により, 最表層の線維性基質よりも明らかに密な網状構造を呈していた.軟骨様組織と骨組織との移行部付近の領域に存在する細胞は長径⊃6~12μmで, 中央部の細胞と比較して若干小型で, 骨細胞に類似した様相を呈していた.軟骨様組織の細胞には, 微細な細胞質突起による隣接した細胞との相互連絡が認められないので, 典型的な骨細胞とは異なっていると考えられる.骨組織との移行部付近の線維性基質では, コラーゲン細線維の配列は不規則ではなく, 一定の方向性を示した.すなわち, 軟骨様組織の細胞と線維性基質は, 骨組織との移行部ほど骨細胞と骨組織の線維性基質に近似する傾向が認められた.軟骨様組織の最表層, 中央部および骨組織との境界部の細胞にはともに, ゴルジ装置, 粗面小胞体およびミトコンドリアなどの細胞内小器官が豊富に認められた.ゴルジ装置は有窓性のゴルジ層板, 小胞および空胞や分泌穎粒様構造物などによって構成されていた.粗面小胞体はおもに有窓性の層板によって形成されていたが, 網状を呈する粗面小胞体も認められた.軟骨様組織は出生直後の歯槽縁の急速な骨形成過程の限定された期間に, 未石灰化基質の形成がその石灰化よりも急速であるために生じた組織であると考えられる.

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