昭和歯学会雑誌
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幼若ラット下顎頭軟骨の基質線維構築に関する立体超微形態学的研究
町田 尚道
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1991 年 11 巻 2 号 p. 220-230

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抄録

胎生19日齢, 生後7日齢および14日齢のラット下顎頭軟骨を材料として, 異なる層区分の基質線維構築の変化と, 基質線維構築の加齢に伴う変化を, 凍結割断法と酵素処理法を用いて走査電子顕微鏡で観察した.ラット下顎頭軟骨は, 関節腔側から線維層, 軟骨原性細胞層, 移行層, 幼若軟骨細胞層, 成熟軟骨細胞層および肥大軟骨細胞層に区分された。線維層では加齢に伴う線維性基質の増加が認められた.移行層には線維軟骨細胞と細胞小器官が未発達な静止軟骨細胞が存在していた.静止軟骨細胞の細胞領域の線維性基質は, 領域間部のものと明瞭な違いが認められず, 不規則なコラーゲン細線維で形成されていた.幼若軟骨細胞層の細胞領域は, 細胞近傍の比較的疎な細線維網とその周囲の密な細線維網および細線維束とで形成されているものが多く観察されたが, それらの構造に加齢による変化は認められなかった.肥大層浅層の細胞領域は比較的密な細線維網で形成されていた.肥大層深層には石灰化物様の構造物が堆積しつつある細胞領域も認められた.領域間部の線維性基質は, 胎生19日齢では未成熟層から肥大層まで一様に不規則なコラーゲン細線維によって形成されていたが, 生後7日齢では成熟軟骨細胞層に束状のコラーゲン細線維が介在するようになり, 生後14日齢ではかなり多くの細線維束が観察された.線維層や領域間部における線維性基質の構築の加齢変化は, 咬合の発生および発達によって生ずる下顎頭への負荷に対する基質線維の適応を示唆すると考えられる.

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