昭和歯学会雑誌
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ラット耳下腺内の弾性線維についての組織学的研究
齋藤 健
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1992 年 12 巻 1 号 p. 29-39

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抄録

ラット耳下腺組織内に発現分布する弾性線維について, その発現状態, 形状, 走行状態などを明らかにするとともに加齢的にそれらの変化がみられるか否かを光顕的に検索を行った.材料は, 生後2週齢から78週齢まで飼育したSD系ラットを用いて, その左右側耳下腺を摘出し, 弾性線維染色, ヘマトキシリン-エオジン染色を施し, 検鏡に供した.観察部位は, 腺房問と導管系の介在部, 線条部, 小葉間導管, 小葉外大導管周囲である.腺房間では, 生後5週齢から78週齢に至るまで, 小葉間結合組織中よりわずかに弾性線維が侵入しているのが認められた.導管系周囲では, 介在部周囲には弾性線維の発現は全週齢に認められなかった.しかしごく一部の線条部周囲では腺房間と同様に生後5週齢から78週齢に極めて少量の弾性線維の発現を認めた.小葉問導管周囲では, 生後3週齢で繊細な弾性線維が少量発現し, 生後5週齢からは中等度にその線維量の増加がみられ, 生後30週齢からは多量の弾性線維の発現が認められた.週齢が進むに従い, 繊細な弾性線維の他に, 太い弾性線維もみられるようになり, 中にはその線維が分枝するのもみられた.弾性線維の形状は, 直線状, 蛮曲状, 蛇行状, ラセン状, ループ状, 糸屑状などの形態を示した.また, 蛇行状, ラセン状, ループ状, 糸屑状の弾性線維は加齢とともに増加していた.小葉外大導管周囲には, 生後3週齢では小葉間導管周囲と同様に少量の弾性線維が発現したが, 生後26週齢からは多量の弾性線維が発現した.走行形態, 形状に関して, 小葉間導管周囲に発現したものとほぼ同様であった.耳下腺組織内に発現する弾性線維の加齢的変化に関しては, 特に小葉間導管周囲, および小葉外大導管周囲に認められた.

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