昭和歯学会雑誌
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ラット顎下腺, 舌下腺内の弾性線維についての組織学的研究
大井手 伸行
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1993 年 13 巻 4 号 p. 405-421

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抄録

ラット顎下腺および舌下腺組織内に発現分布する弾性線維の発現走行状態, 形状を明らかにし, さらにその線維が加齢的に変化がみられるかを光顕的に検索を行った.材料は, 生後0日齢から78週齢まで飼育したSD系ラットを用いて, 左右側の顎下線, 舌下腺を摘出し, 弾性線維染色を行い, 検鏡に供した.また, それらの線維が弾性線維であるかを確認するため, Elastaseを用いて消化試験を行った.観察部位は腺房間と導管系の介在部, 線条部, 小葉問導管, 小葉外大導管の各周囲である.その結果, 顎下腺では, 腺房問には生後1週齢から78週齢まで小葉間結合組織より侵入する弾性線維が少量認められた.介在部周囲には弾性線維の発現は全週齢に認められなかった.線条部周囲では, 生後9週齢から少量の弾性線維が穎粒状に認められ, 26週齢から78週齢までは中等度の発現量を示し, その線維の形状は穎粒状, 蛮曲状, 蛇行状, 輪状を示した.小葉間導管周囲では, 生後1週齢で少量の繊細な弾性線維が認められ, 2週齢から20週齢までは中等度の発現量を示し, 26週齢から78週齢までは多量の弾性線維の発現が認められた.弾性線維の発現量は増齢とともに増加の傾向がみられ, 線維の太さも増齢的に太くなる傾向を示した.その弾性線維の形状は直線状, 蛮曲状, 蛇行状, 波濤状, 輪状, 分岐状, 束状などを呈していた.小葉外大導管周囲では, 生後1週齢で弾性線維が発現し, はや中等度の発現量を示した.そして3週齢から78週齢までは多量の弾性線維の発現を認めた.その線維の走行形態, 形状は小葉間導管周囲に発現したものとほぼ同様であった.弾性線維の加齢的変化は線条部, 小葉間導管, 小葉外大導管の各周囲部において認められた.舌下腺では, 腺房間に発現する弾性線維は顎下腺と同様に生後1週齢から78週齢に至るまで少量発現していた.介在部周囲においても顎下腺と同様に全週齢を通して弾性線維の発現は認められなかった.線条部周囲に発現した弾性線維は, 顎下腺より早く生後1週齢で少量認められ, 26週齢で中等度の発現量を示した.小葉間導管周囲では, 顎下腺と同様に生後1週齢から弾性線維の発現が認められ, また多量に発現するのが顎下腺より早く, 5週齢から78週齢まで認められた.小葉外大導管周囲の弾性線維の発現は最も早く生後0日齢で少量の発現が認められた.その後の発現状態は顎下腺と同様であった.弾性線維の走行状態, 形状は顎下膜とほぼ同様であったが, 線条部周囲に発現した輪状に走行する弾性線維は, 顎下腺のものより明瞭に観察された.なお, 動脈および小葉間導管周囲にみられる弾性線維について, Elastaseを用いた消化試験では, 完全にその線維が消失したので, 本線維が弾性線維であることを確認した.

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