昭和歯学会雑誌
Online ISSN : 2186-5396
Print ISSN : 0285-922X
ISSN-L : 0285-922X
コンポジットレジンの化学環境に対する耐久性
久根下 斉藤島 昭宏
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 14 巻 4 号 p. 339-350

詳細
抄録

市販の3種類のハイブリットタイプの臼歯用コンポジットレジンと1種類のMFRタイプの前歯用コンポジットレジンを用いて円板状試験片を作製し, アルコール (99.5%エタノール), 酸 (1mol乳酸溶液), アルカリ (1mol水酸化ナトリウム溶液), 脱イオン水中環境に2か月間浸漬し, 表面粗さ (Rmax), 吸水量, 溶出量の測定, およびSEM観察からコンポジットレジンの環境耐久性を評価して, 以下の知見を得た.アルコール環境は, MFRタイプのコンポジットレジンには吸水量, 溶出量の増加をもたらし, SEM像の観察で有機複合フィラー・マトリックスレジン界面に沿った明瞭な亀裂が観察された.ハイブリッドタイプのコンポジットレジンでは, SEM像からフィラー・マトリックスレジン界面で間隙が生じたものや, フィラー自体に亀裂が生じたものが観察され, フィラー粉砕時の内部応力の緩和によって生じたものと推察された.酸環境では, SEM像の観察からハイブリッドタイプのコンポジットレジンで表面性状の劣化が認められ, 微小な亀裂やフィラーの溶解脱離した像が観察されたが, MFRタイプでは影響がほとんど認められなかった.アルカリ環境では, すべてのコンポジットレジンに顕著な溶出が認められ, SEM像の観察からも無機フィラーの溶解, 脱離した像が明瞭に観察され, 劣化の程度が一番大きい環境であった.各環境下における表面粗さ (Rmax) は, アルカリ環境では経時的に表面粗さの増加が認められた.その他の環境では表面性状の変化は小さかったが, 保管期間が長くなるに従って, 表面粗さが増加する試料が認められた.また, アルカリ環境は, コンポジットレジンのフィラーの溶解, 脱離が明瞭に認められるものの, 各コンポジットレジンで一様な劣化が生じたため, 耐久性評価のための試験環境としては十分ではないと考えられた.しかし, アルコール, 酸環境では, 各コンポジットの劣化の様相が異なり, アルカリ環境よりも耐久性評価の環境として有効であると考えられた.コンポジットレジンの劣化は, フィラー・マトリックスレジン界面, フィラー自体・マトリックスレジン自体の劣化が複雑に関与するため, コンポジットレジンのフィラータイプ, および浸漬溶液によって劣化の挙動が異なっていた

著者関連情報
© 昭和歯学会
前の記事 次の記事
feedback
Top