昭和歯学会雑誌
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成人下顎頭軟骨の細線維構築に関する立体微細構造学的研究
三野 篤子瀬川 和之
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1995 年 15 巻 4 号 p. 323-334

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抄録

人体における下顎頭軟骨の荷重緩衝様式を検討するために, 荷重緩衝構造として重要なコラーゲン細線維の構築を詳細に観察した.観察には走査電子顕微鏡を用い, 細線維の立体構築を重点的に観察した.成人下顎頭軟骨の細線維構築による荷重緩衝機構の基本像を観察するために, 顎関節に影響を及ぼす外来要素の可及的少ない上下顎の第2大臼歯までの全ての, あるいは可及的全ての歯が残存し, 未処置齲歯の無い成人解剖用遺体の下顎頭を材料とした.線維層の細線維束は層深部を除いて, 関節面に平行に, かつ関節面に平行な面上では交錯して配列されていた.線維層深部の細線維束は関節面にほぼ垂直あるいは斜め方向に配列されていた.層深部の細線維束は縦走, 斜走したのち, 次層の増殖層あるいは軟骨層浅部に達し, それらの多くは細線維束が単独で, あるいは個々の細線維に分枝したのち, 次層の細線維構築中に進入していた.線維層の細線維構築は, 関節面への物理的刺激に対する耐摩耗, 物理的刺激の軟骨深部への拡散あるいは線維層の剥離防止などのための緩衝構造を示すと考えられる.線維層の細線維束による進入を受ける増殖層あるいは軟骨層浅部の細線維は, 疎で網状に構築されていた.この部位の細線維の直径は, 線維層が約0.14μm, 軟骨層が約0.12μmであるのに対し, 約0.09μmであった.軟骨層深部の細線維の多くは大小の束状をなし, 細線維束の多くは様々な方向に走向して, 三次元的に交錯していた.また, 関節面にほぼ平行に, あるいは斜め方向に単純走向する細線維束のみによって占められている部分も存在した.軟骨層と軟骨下骨との境界部では, 両層の相接する細線維束が各々他方の細線維構築中に進入していた.この構造も物理的刺激の軟骨下骨への拡散や軟骨部の剥離防止として機能する可能性がある.下顎頭関節面では, 細線維束相互が不規則に交錯する細線維構築を示した.細線維束は細線維網によって被覆されていた.また, 関節面のかなり多くの部分で, 細線維東上に集積した細線維塊が認められた.細線維塊は関節リモデリングの過程に出現した構造物であると考えられる.

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