1996 年 16 巻 1 号 p. 16-23
小児の乳歯根尖性歯周炎が, 後継永久歯胚に及ぼす影響のうち, 後継永久歯の萌出過程と形成障害について観察を行った.対象は, 乳歯根尖性歯周炎により永久歯胚が感染を受けたと思われる小児11名の乳臼歯18歯である.感染時期の永久歯胚形成段階より, 萌出直後の永久歯形成障害の程度および, 萌出後3年間の永久歯発育状態等について経過観察を行い, 以下の結果を得た.1) 形成不全をきたした症例は, 臼歯部においては, 第二小臼歯より第一小臼歯に, 下顎より上顎に多くみられた.2) エナメル質の石灰化が不十分と思われる時期に感染した症例がほとんどであった.3) 永久歯の形成不全の程度は, 永久歯胚が感染を受けたと思われる時期の永久歯形成段階と関連がみられた.4) 永久歯の萌出開始年齢に関しては, 非感染側に比べ感染側の方が早期萌出している症例が多かった.