1996 年 16 巻 3 号 p. 177-194
口唇裂口蓋裂児のハビリテーションについては, その障害の拡がりが多岐にわたるため, 治療の時期が幼年期に集中することと長期にわたることが医療サイドの問題として堤起されてきた.中でも矯正歯科治療は, 成長の期間を通して治療を継続するいわゆる連続管理システムに見直しが迫られている.つまりこの従来からのアプローチは, 就学期に相当する歯齢IIIA期に劣成長の上顎に対し上顎歯列の拡大を中心とする刺激を与えることにより, 患者の生来有していると思われる成長能を十分に発揮せしめようとするものであるが, この治療の有効性が問われていることになる.そこでここでは, 早期矯正治療の有効性をこれまでの上顎の成長発育一辺倒の観点から新たに口腔の形態と機能への影響の側面を加味し, より多面的な総合評価を試みた.その結果, 症例によっては, 特に口腔機能の観点から見過ごすことのできない効果が期待できることがわかった.