昭和歯学会雑誌
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成人下顎頭関節層の構造変化に関する立体微細形態学的研究
岩崎 恒夫瀬川 和之滝口 励司
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1997 年 17 巻 4 号 p. 388-399

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抄録

下顎頭には顎口腔系の機能あるいは環境の変化と顎関節構造との均衡を維持するために, 適応変化が生じることが知られている.特に関節における機械的負荷の変化に対応する骨関節系の構造変化を関節リモデリングという.本研究では, 成人解剖用遺体の下顎頭を用い, 主に走査電子顕微鏡によって観察した.下顎頭に異常形態が認められない典型的な下顎頭関節層は, 線維層, 増殖層および軟骨層を有する下顎頭軟骨と軟骨下骨によって構成されていた.通常の線維層関節面の多くは, 不規則に交錯するコラーゲン細線維束とこれを被覆するコラーゲン細線維網で構成された線維構築を示した.また下顎頭形態とは無関係に, 関節面の広範囲にわたって堆積している極めて密な網状の細線維塊が認められた.凹凸形成を示す下顎頭関節面では, 骨吸収部の集合を示唆する軟骨下骨板上縁 (関節側縁) の鋸歯状縁の形成と軟骨様組織の軟骨下骨板上への添加とが関節面の凹凸部と一致して認められた.関節面後半部に深達性の侵触が認められる下顎頭では, 線維層下には軟骨下骨板が存在し, 増殖層と軟骨層は欠如していた.軟骨下骨板上面 (関節面) には骨吸収窩と考えられる多数の陥凹が認められた.陥凹底には破骨細胞と考えられる多核の巨細胞がしばしば認められた.これらの構造から, 関節の適応変化である退行性リモデリングと進行性リモデリングの過程が反復して生じる可能性, あるいは退行性リモデリングから退行性関節疾患に移行する可能性が示唆された.

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