昭和歯学会雑誌
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精神疾患患者における歯科治療の困難因子
袖岡 恵秋月 弘道道 健一吉野 建一
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1998 年 18 巻 3 号 p. 234-238

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抄録

精神疾患患者の歯科診療を困難にする因子について, その実態を把握するために調査を行った.調査の対象は昭和大学附属烏山病院の精神科に入院中もしくは通院中の精神疾患患者で同院歯科で治療を行った53名である.その結果, 問診時の問題として主訴の不明瞭, 言語不明瞭, 不定愁訴などを認めた.診査を困難にする問題として疼痛閾値の上昇, 無関心, 表現力の低下, 口腔清掃の不良などを認めた.また, 治療時の障害因子として開口維持困難, 鼻呼吸不全, 不随意運動, 咬合の異常, 治療の拒否行動, 妄想や恐怖心を認めた.口腔衛生管理上の問題点としては口腔乾燥症, 歯周疾患, 歯石沈着および歯肉増殖症を認めた.この結果から, 精神疾患患者の歯科治療を困難にする因子が明らかとなった.これらの問題に対処するには, 問診や診査時の問題については, 十分な時間をかけて問診すること, 家族や介護者からの情報を聞き出すことが有用であった.また.診療時の問題に対しては適切な体位をとり, 開口器や抑制帯などの器具を使用することにより, 大部分が解決できるものと思われた.

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