昭和歯学会雑誌
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交通事故による多数歯欠損に対し暫問義歯を歯科矯正治療初期の固定源に用いた一治療例
小野寺 知子関戸 達哉斎藤 茂柴崎 好伸
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1998 年 18 巻 3 号 p. 239-245

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抄録

本症例は, 初診時年齢17歳の男子で交通事故により上顎前歯5本が抜去され, さらに上顎右側第一小臼歯が歯槽骨内に陥没していた.この症例の治療にあたり, 装着していた暫問義歯を改良し, パーシャルブラケット法との併用で矯正治療初期の固定源として用いた.その後下顎歯列を含めたマルチブラケット法を適用することにより当初5歯分あった欠損部のスペースをほぼ2歯分にまで閉鎖させ, 良好な咬合状態を得ることができた.さらに欠損部の顎堤は, 側方歯群の近心移動による周囲歯槽骨の改造機転による再形成が起こり, 最終的に固定式補綴物の装着が可能となった.一方, 矯正学的見地から, 歯の移動に対する固定源が必ずしも十分ではなく, その結果複雑な治療体系を余儀なくされ, 治療期間の長期化をもたらすなど, 今後検討を要する部分もあった.

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