昭和歯学会雑誌
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口腔領域へのストレスが循環動態におよぼす影響
テレメトリー自動計測システムを用いた基礎的解析
吉野 建二
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1998 年 18 巻 4 号 p. 346-359

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抄録

咬合異常を伴う咀嚼系機能障害患者において, 臨床的に咬合を再構成することにより患者の様々な症状, たとえば顎関節症, 肩こり, 頭痛, 耳鳴り, めまい, 不良姿勢などが緩解されることが報告されている.しかし, 咬合の変化や咬合異常と全身的変化に関する研究は未だ少なく, その因果関係や発症機序を明示するまでには至っていない.本研究は, テレメトリー自動計測システムを用いて, 正常血圧ラット(WKY)および高血圧自然発症ラット(SHR)における活動量, 心拍数, 収縮期および拡張期血圧の相互の関係と口腔領域に加えたストレスに対する循環動態の反応について基礎的解析を試みた.送信器埋め込み手術後活動量は著しく低下したが心拍数は増大した.このような外科的侵襲ストレスからの回復にはほぼ7-10日を要した.回復安定期になるとWKYおよびSHRとも活動量, 心拍数に日内変動が認められたが, 血圧の日内変動は著明でなかった.安静状態における心拍数はWKYおよびSHRにおいて有意差は無く, 収縮期および拡張期血圧はSHRにおいて有意に高かった.活動量および心拍数の増加に伴う血圧の上昇率はSHRにおいて高かった.片側咬合挙上装置を装着して咬合異常のストレスを与えると, ストレス負荷初期には活動量および心拍数は著しく低下し, 以後次第に回復した.一方, 収縮期および拡張期血圧は上昇傾向を示し, 血圧変動の幅(変動値)が大きくなった.変動値はSHRにおいて高い傾向を示した.以上の結果から, テレメトリー自動計測システムを用いてWKYやSHRの循環動態を長期間連続して測定する場合, それぞれの個体の活動量, 心拍数, 血圧の日内変動や血圧の変動値を基準としてストレスに対する反応性を検討する必要性が示唆された.

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