昭和歯学会雑誌
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口唇裂・口蓋裂患者の第一位萌出永久歯の違いによる永久歯萌出様相と顎顔面形態の比較
第一報 : 6歳時における各裂型別の検討
飯田 真由美斉藤 茂杉本 直子大塚 純正向山 賢一郎佐々 竜二柴崎 好伸
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1999 年 19 巻 1 号 p. 86-96

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抄録

近年, 児童の永久歯萌出順序において, 下顎第一大臼歯に先駆けて下顎中切歯が萌出する小児の割合が全国的に増大しているという.さらに, 近年の不正咬合の傾向が反対咬合から前歯部叢生へ移行しているという報告等より, 第一位萌出永久歯の歯種の変化がこれら不正咬合の傾向になんらかの影響を及ぼしている可能性が推測される.しかし, これまで第一位萌出永久歯と顎顔面形態を関連させて検討を行った研究は見られない.そこで今回, 口唇裂・口蓋裂児について, 従来多いと言われている第一大臼歯先行萌出型 (M型) と近年増加してきた中切歯先行萌出型 (1型) の2型に分類し, 以下のような比較検討を行った.研究対象は, それぞれ第一位萌出永久歯の歯種が確認できた裂児群 (220名 : 男児105名, 女児115名) と, その対照としての非裂児群 (290名 : 男児143名, 女児147名) である.これら2群について第一位萌出永久歯の萌出時期と歯種を調査し, さらに裂児群については顎顔面形態との関連性を検討するため, 6歳時の側面頭部X線規格写真を用いI型とM型の顎顔面形態の比較検討を行った.その結果, I型の占める割合は裂男児>非裂男児≒裂女児>非裂女児の順で高く, これら4群すべてについてM型よりも多かった.裂型別では, 男女で片側性口蓋裂と両側性口蓋裂にI型を示す割合が高く, これら2型の男女を合わせたI型率は70%以上であった.また裂児についてのセファロ分析による顎顔面形態の比較では, 男児においてM型がI型よりも大きい傾向を示し, 特に下顎骨長において顕著であった.一方, 女児では特記すべき傾向は見られなかった.以上のことから, I型の近年における増加傾向は非裂児よりも裂児に, 男女別では男児に多くみられた.また裂児における顎顔面形態に関しては, 男児においてはI型とM型との間に顎顔面形態に差異のあることが認められた.

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