昭和歯学会雑誌
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X線分析による硬組織のカルシウム及びリンのX線発生領域の最小化について
佐野 恒吉江川 薫野中 直子滝口 励司
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1999 年 19 巻 4 号 p. 343-352

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抄録

硬組織の形成部位のカルシウム (Ca) やリン (P) の含有量を定量分析する方法ではエネルギー分散型X線検出器 (EDX) を用いる方法が分析例の多さ, 試料の扱い, そして分析精度の点で現在のところ最も優れた方法である.しかし, 歯科領域の分析ではCaとP濃度は同時に測定されることが多く, EDXの通常の設定では, 硬組織, 特に歯の象牙質における管間及び管周象牙質などのように, 分析したい部位が必ずしもCaやPのX線発生領域よりも広くない場合が多い.本研究では, このEDXが据付られた走査電子顕微鏡S-2500CX (日立) で, 硬組織上にどの程度まで小さな分析領域を取ることができるかを, 加速電圧の変化に伴う試料中のX線発生領域の変動と試料の分析面を傾斜させることにより分析値の変化を観察した.そして, これらの結果を基に, 走査電子顕微鏡 (SEM) の分析仕様の限界の7kVの加速電圧で, ラットの下顎の切歯断面の象牙質の表面をX線検出器に向かって角度27.5°に傾斜させてX線分析領域を最小にして, CaとPを分析できた.最初は, 象牙質の唇側の管間及び管周象牙質でSEMの加速電圧の違いによる分析値の変化を観察するため, 加速電圧が7と10kVそして15kVでCaとPの含有量の分析を行った.この唇側の結果から加速電圧が7kVで最も正確な濃度が得られたが, 10kVのときの値に対して有意な違いがなかった.次に, 加速電圧7kVの唇側の結果に合わせて舌側とその中間の近心側と遠心側の管間及び管周象牙質も同様に分析した.その結果, 管周象牙質のCa及びP濃度に有意差が見られず, エナメル質に関連する唇側の管周象牙質のCa含有量は舌側管周象牙質より高かった.

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